設備機器高性能住宅

高性能住宅って夏は暑いの? -日射コントロールと空調計画で快適に暮らすポイント-

2025年09月28日サンキ建設


高性能住宅と聞くと
「年中快適に過ごせる」
「エアコンの効きがよく電気代が安くなる」
といったイメージをもたれる方も
多いのではないでしょうか。

実際に、家の断熱性・気密性を上げることで
室内を快適な状態に保ちやすくなり、
快適性・省エネ性はぐっと上がります。

一方で
「高性能住宅にすると逆に夏は暑くなる」
という声もあります。
実際にそのように感じるケースがあるのは事実ですが
その原因は、住宅そのものの性能ではなく、
日射のコントロール不足やエアコンの使い方にあります。

今回は、なぜそのようなことが起きるのか、
また、正しい日射コントロールの仕方、
エアコンの使い方についてもお伝えしていきます!

高性能住宅で「暑い」と感じるのはなぜ?

断熱性能が高いということは、熱を伝えにくいということ。
外からの熱が室内に伝わりにくくなると同時に、
室内の熱も外に逃げにくくなります。

冬の場合は南側の窓から日中に日射を取り込んで、
暖かい空気を保つことができますが、
夏の場合は室内に日射が入ると、その熱は
高い断熱性能によって室内にこもってしまいます。

これが「高性能住宅は夏は暑い」と言われる理由の一つです。

つまり、家そのものの性能が原因ではなく、
日射のコントロールがうまくできていないことによって
おこる事象なのです。

①日射の特性を理解する

夏の暑さを抑えるためには、
まず日射の性質を理解して季節に応じて適切に
日射を取り入れる、または、遮る必要があります。

季節ごとの太陽の角度

太陽の高さは季節によって変わるため、
建物に対して日射量が多い方角も変化します。
遮蔽物などがない場合、基本的には以下のようになります。

【冬】南面 > 水平面(屋根面) > 東西面

【夏】水平面(屋根面) > 東西面 > 南面 > 北面

夏場は北面にも直接日射が入ってくることがポイントです。

日射をコントロールする方法
日射をコントロールする方法

庇で日射をコントロール

一般的には、南面の日射を庇でカットすることが
有効とされています。
夏は庇で日射を遮り、
冬は日中に日射を取り込んで室内を暖める、
というように、基本的には庇があれば夏と冬それぞれの日射を
プラスにコントロールすることができます。

南面の軒で日射をカット

ただし、9~10月(中間期)は、
真夏に比べて日射の角度が低くなり、
庇では防ぎきれない日射が室内にはいるため、
高性能住宅でパッシブデザインの住宅は
特に暑さを感じやすくなります。

10月頃は庇で防ぎきれない日射が入ってくる

日射をコントロールするには?

原則として、東・西・北面には大きい窓は
設けないのが理想ですが、
敷地の条件や暮らし方によってその通りには
いかない場合もあります。
その場合は庇に加え、以下のような設備が有効です。
遮蔽効果が低い順番に記載しています。

・ブラインド
比較的安価で手軽に採用しやすい設備です。
日射遮蔽効果は後述の設備に比べると低めですが、
ルーバーを調整することで視線の抜けや日射を
簡単にコントロールできます。

・ハニカムスクリーン
ある程度の日射の遮蔽をしつつ、
やわらかい光を取り込めます。
開け閉めが簡単でコントロールしやすく、
空気の層によって断熱性能も上がります。

ハニカムスクリーン
空気の層で断熱性も向上

・アウターシェード
外側で日射を遮るため遮蔽効果は高いですが、
開け閉めは少し手間がかかります。
基本的には冬場は使用せず、
台風や強風時にもしまっておく必要があります。

・外付けブラインド
遮蔽効果は最も高く、電動式であれば室内から
開け閉めができます。
ルーバーの角度や上げ下げを調節することで
日射と視線の抜けを併せて調整できます。

外付けブラインド(電動式・ヴァレーマ)

ポイントは
「室内で遮るよりも室外で遮る方が遮蔽効果は大きい」
ということです。
また、実際に生活する中で開け閉めがしやすいかどうかも重要です。
せっかく付けても使わないと意味がありません。

②適切な空調計画

高性能住宅はエアコンがなくても快適
というのは現実的には難しいです。

高性能住宅はエアコンを少ないエネルギーで
効率的に運転でき、家中の温度ムラを小さくできる、
というのが本来の強みです。

エアコンは点けっぱなしが基本

高性能住宅は、室内が一旦適温になるとその状態を
維持するエネルギーが少なく済むため、
エアコンは点けっぱなしが基本です。
入り切りをこまめに行う場合と
電気代はそれほど変わりません。

エアコンで湿度をコントロール

高性能住宅はエアコンが効きやすい反面、
設定温度にすぐに達してしまいます。
一般的なエアコンは冷房運転している間に
除湿も行いますが、設定温度になると
自動で送風運転に切り替わることがあります。
この風には冷房でエアコン内部に
結露した水分が含まれており、湿度が高い風が
室内に送り込まれます。
これは「湿度戻り」と呼ばれ、
温度が適温でも不快感を感じる原因になります。

各メーカーの上位機種のエアコンには、
設定温度付近まで温度が下がっても冷房を
ゆるやかに続けることで、除湿を続けるモードが
搭載されているものもあります。
(ダイキン「プレミアム冷房」、東芝「弱冷房」など)
これらの運転モードを使うと
温度と湿度を快適に保ちやすくなります。

一種換気との組み合わせでさらに快適に

小屋裏に設置した一種換気(SOCA)

また、換気を一種換気にすると、
外から室内に入ってくる空気(給気)は、
室内から出ていく空気(排気)の温度と湿度によって
ある程度調整され、室内の温度と湿度に近い状態で
室内に入るため、快適な室内環境が安定しやすくなります。

空調は計画や設置する位置などで効果が大きく変わるため、
間取りの設計段階から並行して計画していくことが大切です。
特に冷房は、暖房に比べて空調が広がりにくく
温度ムラが起きやすいため、家の大きさや断熱性能に合わせて
適切な機種や位置、空気の流れを計画する必要があります。

サンキ建設での実例:実験住宅SOCA

サンキ建設のリノベーション実験住宅「SOCA」
例にして日射コントロールのポイントをみてみましょう。

夏の一日の室温変化(SOCA) 青色:外気温、その他:各部屋

南面には改修前の開口を活かして
掃き出し窓を配置しています。
冬場は窓から日射を取り込んで室内を暖め、
夏場は約75cmの深さの軒で日射をカットしています。

南面の窓には、
APW430(樹脂サッシ・Low-Eトリプルガラス・
日射取得型) + ハニカムスクリーン
を設置しています。
冬の日射を取り込むため日射取得型のガラスを採用し、
室内側にはハニカムスクリーンを設置して
季節に合わせて日射を調整しつつ
やわらかい光を室内に取り込みます。

東面の窓には、
APW430(樹脂サッシ・Low-Eトリプルガラス・
日射遮蔽型ガラス) + 外付け電動ブラインド
を設置しています。
夏場の朝の日射を遮るため日射遮蔽型のガラスを採用し、
さらに外付けの電動ブラインドを設置することで、
日射と視線の抜けを調整しています。

ハニカムスクリーンの内側と外側に
温度計を設置して、一日の温度変化を比較してみました。

ハニカムスクリーンの内側と外側の温度比較
ハニカムスクリーンの内外の温度変化(SOCA)

 青色:ハニカムスクリーン外側
 オレンジ色:ハニカムスクリーン内側

外側では、日射が直接当たるため
日中は最大37℃まで上がっています。
一方室内側では、一日を通じて
ほぼ一定の室温を保っています。
(2025年9月3日 エアコン運転有り)
ハニカムスクリーンで日射を遮蔽することの
効果の高さが分かります。

ハニカムスクリーンの外側に設置
ハニカムスクリーンの内側に設置

まとめ

高性能住宅は、その場所・地域に合わせた
正しい設計、施工、住まい方が揃えば
どの季節でも快適に暮らすことができます。

一人一人の暮らし方に合わせた温熱設計ができるのは、
注文住宅ならではの魅力です。

サンキ建設は、京都の地で長年に渡り家づくりを
続けている中で得た経験と知識があります。
京都独自の文化や敷地に加え、
厳しい景観規制の中で、デザインはもちろん
断熱・気密・空調・日射などの性能面まで
こだわりをもって設計・施工しています。

京都で家づくりをお考えの方は、
ぜひお気軽にご相談ください。

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