2025年06月14日サンキ建設
前回のブログではAPW330(樹脂サッシ)とTW(アルミ樹脂複合窓サッシ)の
違いについてご紹介しました。
今回はその続きとして、窓辺のトラブルとしてよく上げられる
「結露」にフォーカスして、詳しく解説していきます。
結露が住まいに与える影響や、サッシの種類によって
結露のリスクがどう変わるのかについて正しく理解して、
住まいを長持ちさせるポイントを学びましょう。
結露は、空気中に含まれる水分が、
冷たい物体の表面で水滴として現れる現象です。
室内の暖かく湿った空気が外気で冷やされた
窓や窓枠に触れると、空気中に含まれていた水蒸気が水に変わり、
水滴として目に見えるようになります。
これは、空気の中に含むことができる水蒸気量が
温度によって変わるためです。
この空気の中に水蒸気を含みきれなくなる温度を「露点温度」といいます。
空気の温度が高いほど、露点温度も高くなり、空気中に
多くの水蒸気を含むことができます。
たとえば、室温20℃、湿度50%の状態では、露点温度は約9℃になります。
冬の外気で、窓の室内側の表面温度が9℃以下になると、空気中の水分が
飽和状態を超えて水滴として窓の表面に現れ、結露となります。
つまり、窓の室内側の表面温度が低いほど結露が発生しやすくなるのです。
木造住宅では、建物を構成している木材に木材腐朽菌という菌が
繁殖すると、腐食が進み家の強度が低下してしまいます。
この木材腐朽菌は、次の4つの条件がそろうと繁殖してしまいます。
・温度(20~30℃)
・栄養(木材)
・酸素
・水分(湿度85%以上)
木造の建物では、水分以外の条件は年中そろっていることが多いため、
繁殖させないためには水分をコントロールするしかありません。
よって、結露を起こさないようにすることが大切です。
部位 | APW330 (樹脂サッシ) | LIXIL TW (アルミ樹脂複合サッシ) |
---|---|---|
窓全体(ガラス+枠) | 1.55 W/㎡・K | 1.53 W/㎡・K |
ガラス中央部 | 1.30 W/㎡・K | 1.20 W/㎡・K |
枠部分(参考値) | 約2.00 W/㎡・K | 約2.50 W/㎡・K |
※条件は同一:防火仕様、Low-E複層ガラス+アルゴンガス、日射取得型
※各メーカーの試験値による
※枠部分の値については06009サイズから算出した参考値
前回のブログにも載せましたが、上の表はAPW330(樹脂サッシ)と
TW(アルミ樹脂複合窓サッシ)を枠とガラスに分けて
それぞれのU値(熱還流率)を示したものです。
U値は結露の発生に大きく関係しています。
結露には「表面結露」と「壁体内結露」の2種類があり、
窓ガラスや壁の表面に発生するのは「表面結露」、
壁の中に発生するのは「壁体内結露」です。
→「壁体内結露」を起こりにくくする施工については過去のブログにて
結露と聞くと、ガラス部分のイメージが強いかもしれませんが、
実は枠部分の結露の方が建物に深刻なダメージを与えることがあります。
窓枠には見えている部分と壁の中に埋まっている部分があります。
表面に見えている部分で結露がおきている場合、
壁内の隠れた部分でも結露している可能性が高く、
木材が腐っていることに気が付かず、
知らないうちに家の強度が低下してしまう…というリスクがあります。
U値が高い(断熱性能が低い)④の部位(上図より)は
結露が起こりやすい、かつ、構造躯体への影響が大きい部分であるため、
枠の断熱性能が低いサッシを採用する場合は注意が必要です。
もちろん樹脂サッシでも結露が発生して構造体に
影響を与える可能性はあるので、どちらの窓でも結露の対策は
しておいた方がいいでしょう。
特に、窓枠の下部分は冷気がたまりやすく、
結露が発生しやすいため気を付けておきましょう。
下の写真は、サンキ建設の実験棟「SOCA」で
1月の室内温度をサーモグラフィで撮影したものです。
オレンジ色から青色にかけて、温度が下がっていることを表しています。
・外気温:約2℃
・室温:約24℃
・床下エアコン吹出口:約26℃
・APW430(樹脂サッシ)枠部分:約18℃
一番温度が低い枠部分でも約18℃と、APWの断熱性能の高さが分かります。
結露を発生させないカギは、温度と湿度をコントロールすることです。
① 室内の温度を上げる
・暖房温度を適温に設定し、窓表面の温度を上げる
【室温20℃、湿度50%の場合】
露点温度は9℃となるので、窓表面の温度を10℃以上に保つ
② 室内の湿度を下げる
・加湿器の設定を調整する
・ガスファンヒーターなど水蒸気を発生させる熱源の使用を控える
【室温20℃の場合】湿度40~60%に保つ
③ 冷気のたまりを作らない
・カーテンやブラインドを締め切らない
・窓の前に家具などを置かない
①温度、②湿度は実際に目に見えないため、
温湿度計とご自身の体感を照らし合わせながら調整してみましょう。
また①温度、はカーテンや家具で、ある程度遮ることができますが、
②湿度は、カーテンなどでは遮ることができないため、
③の対策を行うことで、窓際の①温度、②湿度を室内と同じ状態に
近づけることができます。
リフォーム用ですが、YKK APのHPで結露予測シミュレーションが
できるので、参考にしてみてください。
結露はただの水滴に見えて、家の寿命に大きく影響することも…。
住まいを長持ちさせるためには、
窓そのものの性能はもちろん、結露の対策も必要です。
結露が発生する仕組みや、サッシの種類ごとの特徴を理解して、
適切な住まい方を心がけましょう。